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住宅ローンがある場合の債務整理の注意点―知っておきたい個人再生の有用性

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1 住宅ローンの支払いが遅れた場合に起こること

個人再生の有用性を理解していただくために、まずは住宅ローンの支払いが遅れてしまった場合にどのようなことが起こるのかを説明します。


住宅ローンを組む場合、銀行からは自宅と自宅の土地に抵当権を設定し、担保として提供するように求められます。

住宅ローンが支払えなくなってしまい、数ヶ月の遅れが発生すると、銀行としてはローンの回収のために抵当権を実行し、自宅を競売により売却しようとします。

また、少しでも自宅を高く売り、残ったローンの残高を減らそうとする場合には、任意売却の手続を取り、自宅を売却することになります。


いずれにしても自宅を売却し、残った債務を返済していく必要があり、返済できない場合には自己破産の手続を取ることが一般的になると考えられます。


2 個人再生手続を利用する場合の一例

債務者:A男(42歳)

    年収 550万円(毎月の手取り 約33万円)

    住宅ローン残高2500万円(毎月の返済額 約7万5000円)、その他の借入800万円

家族構成:妻B子(39歳)、長男C男(6歳)、二男D太(4歳)


A男さんは、結婚前にカード会社の勧誘を受けてカードを作成しましたが、一括払いの利用だけで、残高が残るようなことはありませんでした。

結婚後数年して子どもが生まれ、住宅ローンを組んで自宅を購入しました。

しかし、二人目の子どもが生まれた頃から、B子さんが子どもの世話にかかりきりになってしまい、家で落ち着くことができなかったことから、仕事帰りに飲みに行ったり、競馬やパチンコに行ったりするようになってしまいました。

そのうちにギャンブルにのめりこんでしまい、小遣いでは足りない分をカードで借り入れるようになってしまいました。

ギャンブルで負けが続くと、その負けを取り戻すために、さらに借入をしてギャンブルをし、なんとか負けた分を取り返そうとしてしまいました。

そのうちに借入額が増えていき、ついには毎月の返済額が15万円程度になってしまいました。

A男さんはB子さんに内緒で借金をしていましたが、もうこれ以上返済できないという状態になったので、B子さんに借金のことを打ち明けました。

800万円近くの借金があることを聞いたB子さんは、A男さんに離婚を考えていると言いましたが、A男さんは、誠心誠意謝罪し、借金のことはなんとか解決するから、その結果を聞いて考えてほしいと伝え、なんとか離婚を免れることができました。


A男さんは、住宅を残したうえで借金をなんとか整理したいと考え、インターネットで調べたところ、「個人再生」という手続があり、どうやら住宅を残して借金の減額を受けることができる制度であることが分かりました。

そこで、職場の近くの法律事務所を探して予約を取り、個人再生について弁護士に相談することにしました。


法律事務所に相談に行くにあたり、法律事務所からは、全ての預貯金通帳、保険証券、退職金の分かる書類、住宅ローンの契約に関する書類などを準備してきてほしいと頼まれ、準備して予約をした日に法律事務所を訪ねました。


法律事務所で弁護士から個人再生について色々話を聞いたところ、個人再生を利用すれば住宅ローンをそのまま支払続けることができ、約5分の1に減額された借金を3年で返済することができれば、住宅を残したまま残りの借金を支払わなくてよくなるということが分かりました。

そこで、現在の給料から必要な生活費を引いた残りで借金の約5分の1の金額を3年で返済できるかを検討することになりました。

これまでは借入と返済をしながらの生活であったため、正確な家計が不明になっていたことから、まずは家計簿をつけながら、様子を見てみることになりました。

また、弁護士費用も必要となるので、毎月予想される返済額(約60,000円)以上の費用を支払った残りで生活ができるかどうかを確認してみることにしました。

この時点で弁護士から各債権者に受任通知を送り、住宅ローンを除いた返済をストップしていますので、その間に生活の見直しをしていくことが重要になります。

A男さんの場合の毎月の生活に必要な費用は以下のとおりでした。

住宅ローン75,000円、食費・外食費等60,000円、水道光熱費15,000円、電話料金20,000円、ガソリン代12,000円、交通費13,000円、保険料45,000円、日用品10,000円、医療費10,000円、被服費10,000円、教育費10,000円

合計約280,000円

A男さんの毎月の手取収入は約330,000円でしたので、60,000円の弁護士費用を支払うと少しマイナスになりますが、子ども手当が毎月20,000円相当入ってくることや、ボーナスが年間130万円あったことから、60,000円の返済をしていくことは可能な状況でした。


そこで、A男さんと弁護士が相談のうえ、最終的に個人再生の方針を取ることに決定しました。

申立ての準備をするにあたり、財産目録を作成する必要がありますが、A男さんの場合、保険の解約返戻金が約100万円近くあったことや、退職金が850万円程度あったため、財産総額が200万円を少し超えてしまいました。

現金や普通預金については、99万円まで手元に残すことができるため、50万円程度手元にありましたが、影響はありませんでした。

財産目録の財産総額は返済総額に影響しますが、A男さんの場合には、住宅ローン以外の債務額は約800万円であり、5分の1にすると160万円となります。

この金額と財産総額を比較すると、財産総額のほうが多く、個人再生としては財産総額に相当する金額を弁済する必要があります。

したがって、200万円を3年で返済するとすると、1ヶ月当たりの返済額は約56,000円となります。

債務額の5分の1を超える返済をする必要がありますが、当初に予定していた金額の範囲内であったため、弁護士費用の支払いが終わった後に裁判所に個人再生の申立てをし、無事に認可決定を受けることができました。

なお、個人再生の申立てをした後は予定される弁済金額を積み立てていく必要があり、積み立てたお金を引き出して使ったりすることはできません。


認可決定を受けた後は3ヶ月に一回約17万円の返済をしていくことになりますが、それまでに積み立てた分や、これから積み立てていく分さえ忘れなければ十分に返済していくことができます。

A男さんは無事に返済していくことができる状態になったことをB子さんに報告し、離婚することなくこれからも一緒に暮らしていくことができました。また、A男さんは競馬やパチンコ等に行くこともなく家に帰るようになり、余暇に子どもと過ごしたり、余裕ができたお金で家族旅行に連れていったりすることもできるようになり、夫婦関係もこれまで以上に良好になりました。


3 個人再生の有用性

このように、A男さんは、個人再生を利用することにより、住宅を残してその他の借金の減額をして返済をしていくことが可能となりました。

最初に説明したように、個人再生を利用しない場合には、銀行から抵当権を実行され、住宅を売却した後に残った債務をどのように整理していくかを考えなければなりません。

もちろん、住宅を売却して残った債務について個人再生を利用することは可能ですし、A男さんのように財産を持っている場合には住宅を売却した後にも個人再生を利用することは十分に考えられます。


しかし、住宅が残せるということは価値が大きく、生活の根拠が変わることの負担も減りますので、住宅ローンが支払えなくなる前に早めにご相談いただければと思います。

コロナ禍の影響により、住宅ローン破綻も増加しているというニュースもありますので、個人再生の利用についても一度ご検討ください。


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この記事を書いた弁護士


弁護士 谷 憲和(大阪弁護士会所属)


弁護士登録以来10年以上にわたって,債務整理・自己破産・個人再生を取り扱っています。

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