借入れ問題に関する当事務所の考え

借入れ問題に関する当事務所の考え

現在、日本全国で消費者金融やクレジット等の利用者は1000万人以上ともいわれ、世帯数で見ると6軒中1軒以上の割合であり、一説では全労働人口の半数が該当するのではないかとも言われています。
また、改正貸金業法の完全施行によって総量規制がかかり、借入れ自体ができない人が出てきたことにより、借入れ問題がさらに難しく深刻な社会問題になっています。
現在、弁護士会や自治体レベルによる法律相談を行っているものの、曜日や時間の規制がありニーズに応じた対応が難しく、事実上、対象者の利用が制限されているのが現状です。
その上、利用者自身は、周りには知られたくないなどの諸事情で、債務整理に対しあまり前向きではなく、周りには一見裕福にすら見えるため、問題をかかえていることに気付かない、感じさせないことで分かりにくくなっていて、実は誰にも相談できず一人で悩んでいるというケースが多くなっています。

今までに当事務所に来られた方の傾向としては、利用期間の長い多重債務の方ほど債務整理による解決に抵抗感があり、行動範囲も限られ情報の入手が困難で、情報を入手しても他人事であると考えたり問題の先送りをするということが多くなっています。
このようなことから、利用者の特性に応じたアナウンス、情報提供をしていき、債務整理の相談ができる、借入れ問題の解決ができる環境を整えていくことが必要であると考えています。
また、借入れ問題には離婚、DV、子供の不登校など、他の問題も同時に抱えていることも多いです。周りの身近な方が問題を抱えていることに早く気づいたり、アドバイスするなどの後押しや手助けが必要で、それが解決への一番の力となります。

課題として

  1. 費用の問題(弁護士費用が払えないのでは…)
  2. 諸事情(家族や周りに内緒、持ち家等)
  3. 義理(借りたものは返したいという考えや、後ろめたい気持ち)
  4. 債務整理を依頼しても解決できなのではないかという思い込み。
  5. 弁護士に相談=自己破産=人生の終わりという債務整理についての偏見や誤解。
  6. お金が必要な時は、また借入れしたい。
  7. 借入れが出来なくなることへの不安=生活できないのではないかという思い込み。
  8. テレビコマーシャルやマスコミの影響。
  9. 債務整理の手続きがややこしく、何か面倒ではないのかという先入観。
    etc…

借入れをする場合には、通常、何らかの理由でお金が必要になり、そのお金がない、もしくは足りないから借入れをするということになります。
その時は支払いできると思っていても、別の出費で支払いするお金が足りなくなってしまうから更に借入れをするという流れで借入れが膨れ上がっていきます。
借入れや支払いに不安を感じていてもお金がないから債務整理ができない(今でも支払いに追われているのに、弁護士に債務整理を依頼できるはずがないという思い込み)、債務整理ができないから支払いが無理になるまで支払いしていく、このまま支払いしていけばいつか終る、利息を下げてもらったから支払いしていける、支払いさえしておけばまた必要になった時には貸してもらえるという考えなどで、より一層、債務整理の相談、債務整理を依頼しにくい状態となっています。

また、以前に比べテレビコマーシャルの影響などでサラ金やクレジットが身近に思える存在となり、利用することへの抵抗感が少なくなり、遊興費や、買い物などのために利用されていることも多く、生活難による必要性の高い借入れは減少し、上記の理由などでの借入れが増加している傾向にあると言えます。

以上のようなことによる複合的な要因により、借入れ問題は解決しにくくなっており、現状では将来的に全面的な解決を図ることが難しいと考えられます。これから新たな借入れ問題を抱える人を増やさない為にも借入れに対する啓蒙活動が必要不可欠です。
現段階では改正貸金業法に伴うメリットが多くなっていますが、一定期間経過後は、法改正のデメリットが出てきて、従来までのグレーゾーン金利の差額を利用した債務整理(任意整理など)で問題解決をしていくことが出来なくなり、自己破産が急増、または費用の問題等で自己破産すらできない事態も予想でき、国の政策で新たなセーフティネットの構築が必要なのではないかと考えています。

また、金融会社の倒産や廃業がすでに現実のものとなっており、突然の貸しはがしや、融資のストップも起こっています。
今は貸し手、借り手共に混乱しており早く対策をうたなければならず、今後国は当然のこと、各自治体や私たち弁護士の果たさなければならない役割はさらに重要なものとなっていくでしょう。

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