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【個人再生裁判例紹介】東京高等裁判所令和3年11月9日決定

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1 判示事項

給与所得者等再生手続開始の申立てについて、民事再生法25条4号所定の申立棄却事由は認められないとされた事例


2 事案の概要


抗告人は、クレジットカードのリボ払いの債務や、母の治療費や葬儀費用のために個人債権者から借入れをするようになりました。

弁護士に債務整理を委任したものの、費用を支払えなかったり、方針が決まらなかったりするなどして、何度も弁護士や司法書士に辞任されてきました。

そのような経過をたどり、裁判所に対して個人再生の申立てをしました。


申し立てた再生債権の額は約2740万円であり、そのうち個人債権者からの借入は14名、債権額は約2400万円となっていました。

個人債権者からの借入には、マッチングアプリや婚活サイトで知り合った女性と関係を持ち、生活費等の名目で借り入れたものが相当数含まれていました。抗告人の代理人が個人債権者に意見を聞いたところ、明確に反対の意見があったのは1名でした。



3 決定の理由


民事再生「法25条4号の文言及び趣旨等に照らすと、同号所定の「不当な目的で再生手続開始の申立てがされたとき、その他申立てが誠実にされたものでないとき」とは、真に再生手続の開始を求める意思や再生手続を進める意思がないのに、専ら他の目的(一時的に債権者からの取立てを回避して時間稼ぎを行ったり、その間に資産の隠匿を図ったりすること等)の実現を図るため、再生手続開始の申立てをするような場合など、申立てが上記のような再生手続本来の目的から逸脱した濫用的な目的で行われた場合をいうものと解するのが相当である。」


本件については、以下のような理由で、「再生手続本来の目的から逸脱した濫用的な目的で行われたものと認めることはできない。」と判断されました。

・上記のような借入れの事情から、「本件再生債権の中には、悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権が相当額あることがうかがえる。「しかし、悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権については、再生計画において減免の定めをすることはできず、再生計画に基づく弁済が終了した後に残額を弁済しなければならないとされている(法229条3項1号、232条4項、5項、244条)。したがって、抗告人が悪意で加えた不法行為に基づく相当額の損害賠償債務を負っているからといって、本件再生手続開始の申立てが、その支払を免れる目的で行われたと認めることはできず、専ら他の目的の実現を図るため、濫用的な目的で行われたものであると推認することはできない。」

・「破産・免責手続においては、上記のような事実があったとしても、当然に免責不許可決定がされるものではないし(同法252条2項参照)、再生債務者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権については減免の定めをすることができないことは前記のとおりであり、抗告人が、破産・免責手続における免責不許可決定を殊更回避する目的で本件再生手続開始の申立てを行ったとまで認めるに足りる資料はない。したがって,抗告人に、破産・免責手続における免責不許可事由に該当する可能性のある事実が認められるからといって、本件再生手続開始の申立てが、再生手続本来の目的から逸脱した濫用的な目的で行われたものであると推認することはできない。」「現時点において、本件再生手続を進めることについて同意していない債権者が存在し、再生計画に基づく弁済の可能性が必ずしも高くないなどの事情が認められるからといって、本件再生手続開始の申立てが、再生手続本来の目的から逸脱した濫用的な目的で行われたものであると推認することはできない。」


「本件について、法25条4号所定の棄却事由があるとして、抗告人の申立てを棄却した原決定は相当でないから取り消し、原審において、再生手続開始の原因の有無(法21条1項)のほか、小規模個人再生又は給与所得者等再生に関する特則の適用の可否(法221条1項、239条1項)等について更に審理を尽くさせるため、本件をさいたま地方裁判所に差し戻すこととし、主文のとおり決定する。」


4 コメント


不当な目的をもって個人再生の申立てをした場合には、個人再生法で申立てを棄却することとされています。

そして、不当な目的等で個人再生の申立てをした場合とは、真に再生手続の開始を求める意思や再生手続を進める意思がないのに、専ら他の目的の実現を図るため、再生手続開始の申立てをするような場合など、再生手続本来の目的から逸脱した濫用的な目的で行われた場合をいうものと判示しました。

本件の事例が不当な目的等で個人再生の申立てをした場合に当たるかを検討していますが、結論としては当たらないとして地方裁判所に差し戻しています。

本件は、債権の中に悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権が相当額あったり、破産・免責手続においては免責不許可事由に当たり、免責不許可になる可能性のある事実もあるうえ、再生計画に基づく弁済の可能性が必ずしも高くないという事案でした。

しかし、悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権については、個人再生をしても全額弁済が必要となること、免責不許可事由があっても必ず免責不許可となるものではないこと、再生計画に基づく弁済の可能性が高くないとしても、それのみから濫用的な目的で行われたものとはいえないという理由で、不当な目的をもって個人再生の申立てをした場合には当たらないと判断しました。


事例判断になりますので、近い事例であっても必ず棄却されないというものではありませんが、本件のように問題点が多くあるような事案であっても、不当な目的をもって個人再生の申立てをしたものではないと判断されました。

大阪地方裁判所では原則として個人再生委員が選任されないこととなっていますが、問題点が多くある事案については、問題点の調査のために個人再生委員が選任される場合がありますので、予納金の準備など、対応が必要となってくる場合があります。


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この記事を書いた弁護士


弁護士 谷 憲和(大阪弁護士会所属)


弁護士登録以来10年以上にわたって、債務整理・自己破産・個人再生を取り扱っています。

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